
Love Letter From Happy Heart
谷川俊太郎様 こんにちは。私はいままで、「内容を持たない人間」をどうするか、ということを考えてきましたが、どうもそれを解決するのができずに墓場まで持って行かねばならないようです。 言葉をつきつめていらした谷川さんの人生。ただし、世間はコンビニの並ぶ通りに、コンビニをさらに建...

キャット ノート
街にはとびきり美しい猫がいるとの評判が立った。その猫の話しをするひとは、犬のように従順だった。彼らは言ってみれば「人間の犬」なのであった。人間は自由でない。 人間は予め与えられた心の範囲を模索しつづけているだけで――。 新しい心。新しい生活の規範。それが予め奪われている。...


ピアノの下
プロローグ だれにも知られていない事は、だれかに知られてはならない事だ。 「彼はどこから来たの?」と彼と相手の事を呼んでいる会社のオーナー。ジャニー喜多川がタレントを呼ぶときに用いる(You)と同じ意味だ。 このオーナーという奴が同性愛者である。この組合では、人の事をあ...

カム・スター
目を見張るほどの快挙だった。彼は水泳で身につけた腕力、棒倒しで身につけた闘志、そして放蕩生活によって傷ついた心で、私の顔面をはたいた。まさか、歯を持っているとは思わなかった。抜けてしまった歯の代りを、彼は素早く出してくれた。殴る事も計算にあったのだ。...


よく着る洋服
1 私はここに来て、あまり面白いことも無かったけれどそれでもどこがどういいのかと言える、いくつかの事があった。 例えば、よし夫くんと出会えた事もその一つだった。よし夫くんはまだ子供で、子供というのは、ハチ巻きなんかをして町内会のお祭で太鼓を叩くような「THE子供」という...